少年、寄宿舎、ラヴ・レタア…『燃ゆる頬』
BL《ボーイズラブ》はじめまして。
水曜日のマダム、シュガーと申します。よろしくお願いいたします。
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©小野塚カホリ『燃ゆる頬』(ジュネット)
原作は、堀辰雄。ってーと。
あの『風立ちぬ』の堀辰雄がBLの原作?まじか。
まじでした。
舞台は高等学校の寄宿舎、主人公は17歳。慣れない生活での背伸びは主人公に少年からの脱皮を促していきます。
少年からの脱皮を決定的にする『最後の一撃』は、他室から主人公の部屋へ転室してきたひとつ年上の三枝(さいぐさ)という少年との出会いでした。
三枝の美しい皮膚、薔薇色の頬、ほっそりとした頸(くび)を教科書の影から盗み見る主人公。三枝との関係はある夜のできごとをきっかけに深くなっていき……
少年から男に脱皮していく主人公と少年のままの三枝。二人の儚い、恋愛に似た関係を描いた物語です。
ただし、ご注意・1932年に発表された原作です、現代のBL小説と思って手を出したら、ちょっと物足りなく、悲しい思いをするかも知れませんが。
さて、この原作を小野塚先生はどうBL漫画として成立させるのか。
原作では、肌と肌の触れ合いはほんのりと描写されています。
たとえば、熱を出した主人公の額に触れ、脈をとるには不自然な具合に手首を握る三枝。旅先の宿で三枝の病の痕に触れる主人公。
ドキドキですね。「で、それから?それから?それだけじゃないでしょ?」期待は高まりますが、残念ながら原作ではここまで。行間を読んで読んで読みまくって、妄想で補完しましょう。
でも、ご安心下さい。小野塚先生はちゃんとそのあたりも描いて下さっていて見事にBL漫画となっております。
小野塚先生といえば、細く繊細な線。少年たちの世界は、小野塚先生の描く線で、今にも消えそうな心細さをいっそう際立たせているように感じます。
そして、この漫画で私の心を掴んだのは、主人公の表情の変化です。
『少年』の表情が、三枝と深い関係となった後、見事に『男』の顔になっているのです。
これは、ちょっと鳥肌が立ちました。変化を目に見える形で描写できるのは、漫画ならではの強みですよね。
BL、BLと書いていましたが、私としては男性同士の恋愛を『JUNE』とか『耽美』とか呼んでいた時代の作品を読んだ後のような懐かしい気持ちになりました。
それは、古風と言うことではなくて……ありふれた言い方になりますが、美しいのです。 原作のほんのりとした触れ合い描写に、BLならではの性愛表現を加えてもなお、美しい。
皆さんもぜひご堪能ください。
ちなみに原作はネット上で無料で読むことができますので、興味がありましたらぜひ合わせてお楽しみください。
http://gigicomi.com