謎の肖像画が紡ぐ禁断の千夜一夜物語『プリンス オブ サハラ』
BL《ボーイズラブ》
©新田祐克/リブレ出版
選ばれし人間だけが参加を許されるオークション『セブンクラブ』。今夜の目玉は、ロットNo.7『禁覧の肖像』。アラブの王族が所有してきた謎に満ちた肖像画と、モデルとなった西洋人の子孫とされる美少年。それを纏めて5億で落札したのはアラブの碧眼の王子だった。「知りたいか。お前の祖先がどのような人生を送ったかを……」今明かされる彼らの祖先が辿って来た切なくも美しい千夜一夜物語…!! 表題作の他「赤珊瑚の法悦」「男弁天艶聞録」を収録した、新田祐克渾身の歴史ロマン玉手箱。
(引用元・GiGicomi)
昔々、妻の不貞に深く傷ついたシャフリアール王は、恐ろしい心にとり憑かれ、毎晩処女と寝ては翌朝殺してしまうことを繰り返すようになりました。
ある日、大臣の娘シェヘラザードは、苦悩に沈む父を見かねて、自ら王の元へ嫁いでいきました。
古今の物語に通じたシェヘラザードが王に夜伽の語りを聞かせると、物語に引き込まれた王は次の夜まで次の夜までとシェヘラザードを生かし続けました。
いくつもの夜を重ねるうちに、魅惑的な夜伽話を聞き続けた王は、いつしか頑なな心がとかされ、以前の恐ろしい所業をやめて、シェヘラザードを正妻に娶りましたとさ。どっとはれ。
こんにちは。「時は流れて現代日本、うちの父は深夜にラーメンを食べ続け、千一夜目に糖尿病になりました」というインパクトの弱い話をでっち上げようとしてやめた本日担当のにくです。
今日ご紹介するのは新田祐克先生の『プリンス オブ サハラ』(リブレ出版)。
砂場にまさるス○バ無し!悠久のサハラに滴る男たちの汗と愛!
……とかいうアオリとは比べ物にならないくらい、美麗で豪華でロマンスの香りにあふれてます。
もうですね、思いっきり浸ってから数日たった今、カラオケで「ロマンチックあげーるよー♪」って歌ってる人に「う~~ありがとー♪」っていう合いの手めちゃめちゃ入れたいですよ。
そんなロマンスに引き込んでくれる絵の力がまた素晴らしいですね。
男達は美しいイケメンですし、アラブと西洋の王族の衣装がロイヤルで、どのページも眼福ものです。
大富豪の中でも選ばれた人間だけが集うセブンズクラブ。
高貴できらびやかな豪華客船で王族兄弟がオークションに参加しながら会話をしてるんですが、まあなかなか物騒なこと言ってますよ。
そんな背徳の秘密クラブで兄弟が落札した絵画と……金髪碧眼の美少年を巡って壮大な歴史ミステリーが華麗に繰り広げられます。
アラブの王族と、アラブに侵略された西洋の亡国。
その亡国の王の子孫である美少年がアラブをよく思ってるわけがなく、険悪な関係から始まります。
しかし、過去の逸話を辿ると、そこには悲しくも美しい愛があったことが次第にわかっていき……。
表題作の他、『赤珊瑚の法悦』『男弁天艶聞録』も収録されております。
この2作は日本が舞台でして、アラブと西洋のロマンスに浸ったら、今度は和風ロマンスに浸ってと贅沢な一冊ですね。
『赤珊瑚の法悦』の美童はみずらですよ、みずら。
絵にも描くけない美少女のような美少年が描かれてます。
草壁王子は王子にしてはちょいワイルドっぽいイケメン。
海神様はさすが神様。
美しい人間と神様と……タコ?触手だー。
ああでも、タコよ……切ないねぇ。
切なすぎて怖いくらいの情念だねぇ。
『男弁天艶聞録』は明治時代が舞台のようです。
英国人と見世物小屋の元士族の兄弟のお話。
「男弁天」は弟のことで、金を取れるよう弁天に仕込んだのは兄だそうで……幕末の動乱を生き抜いた方は過激ですね。
英国人は想い人を探しに来たんですが、見世物小屋で弁天ショーをガン見してたら色々つけ込まれちゃいます。
兄弟とって、それっていわゆる3……?
絵もストーリーもため息が出るような美しさです。
アラブ、西洋、日本の神話と時代物の耽美な空気を存分に味わってくださいませ。
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